船主と船舶修理業者間の紛争は決して新しいものではない。しかし、この古くからの対立関係に対する新たな解釈が、米国第5巡回区控訴裁判所における最近の判例「ワン・ビーコン保険会社対クロウリー・マリン・サービス社対トゥバル・ケイン・マリン・サービス社事件(事件番号10-20417、第5巡回区、2011年8月19日)」で示されている。本件の基礎となる事実は比較的単純であり、船舶を造船所に修理に出した経験のある者にとっては、憂鬱なほど見覚えのあるものだ。あるバージの所有者がテキサス州の造船所と修理作業の契約を結んだ。作業員が修理作業中に負傷し、関係者全員を訴えた。船舶所有者は造船所所有者に対し補償を求め、造船所の保険契約に基づく補償を主張した。
裁判所が審理した争点は、造船所が負傷に起因する費用及び支出について船主を補償する契約上の義務を負っていたか、造船所が保険契約において船舶所有者を追加被保険者として加える契約上の義務を負っていたか、そして最後に船舶所有者が実際に追加被保険者として指定されていたか、の三点であった。
地方裁判所は、造船所が船舶所有者を補償する契約上の義務を負っており、また所有者を保険に加入させる契約上の義務も負っていると判断した。しかし、地方裁判所は、造船所が実際に、自社の保険契約において船舶所有者を追加被保険者として加えるために必要なすべての手順を踏んでいなかったと認定した。
控訴裁判所は、地方裁判所の判決を支持するか覆すかを判断するにあたり、造船所と船舶所有者間の契約関係の状況、ならびに造船所が船舶所有者を既存の保険に組み入れるために必要な手順を検討した。
船舶修理および船舶所有業に携わる者にとって、造船所と船主の間に書面による契約が存在しなかったことは驚くに当たらない。むしろ、船舶は造船所に引き渡され、造船所の生産監督者と船主側の港湾技師との間で協議が行われ、その後しばらくして船主から作業指示書が発行され造船所に届けられたのである。 この作業指示書には造船所も船舶所有者も署名しておらず、記載された修理作業の実施条件も詳細には記されていなかった。むしろ、作業指示書は船舶所有者の修理作業に関する標準条件を参照し、それらを船舶所有者のウェブサイトで閲覧可能と記載していた。残念ながら、作業指示書に記載された条件へのアクセス方法の説明は誤っていた。
海事法には詐欺防止法が存在しないため、裁判所は署名入り契約書の不在を問題視しなかった。裁判所はさらに、海事法には広範な参照による組み入れの原則が存在するため、船主のウェブサイト上の利用規約が当事者間の修理契約の一部となり得ると指摘した。 裁判所はさらに、船舶修理契約が海事契約であることは確立された法理であると指摘した。興味深いことに、船舶建造契約や船舶売買契約が海事契約に該当しないことも同様に確立された法理である。考えてみれば当然のことだ。
裁判所は、作業指示書における利用規約へのアクセス方法の記載が不正確であったことを指摘したものの、外部関係者による代替手段での利用規約へのアクセスは依然として可能であり、たとえその利用規約が4ポイントの文字サイズであったとしても(比較のため、本通知は10ポイントの文字サイズである)、これらの手段によって利用規約を確認できると判断した。 第一審裁判所は造船所が実際にウェブサイトにアクセスして所有者の利用規約を確認しなかったと認定したが、裁判所は造船所がアクセス可能であったため当該利用規約に拘束されると判断した。さらに裁判所は、当事者間の比較的短い取引実績(過去の軽微な修理作業8件)において同一のウェブサイト利用規約参照が使用されていた事実が、当該利用規約が契約の一部を構成するという判断を支持すると指摘した。
当該ウェブサイトの契約条件では、造船所が本件で申し立てられた種類の責任について船主を補償すること、また造船所が保険契約において船舶所有者を追加被保険者として指定することが義務付けられていた。
裁判所は次に、造船所の保険会社が追加被保険者として当事者を追加するために定めた手続きを検討し、造船所がこれらの手続きを遵守していなかったと判断した。これらの手続きは、追加被保険者とされる当事者の氏名と住所を保険会社に通知するという点に集約されていた。
したがって、裁判所は造船所には契約上の補償義務が存在し、かつ船舶所有者を保険契約に追加する契約上の義務も負っていたが、この義務を履行しなかったと判断した。しかしながら、造船所が保険会社の手続きを遵守しなかったため、保険会社は責任を免れた。
この物語の教訓は、今日のインターネット主導の経済においては、自社のウェブサイト上でしか入手できない資料を参照することにより、標準的な契約条件を海事契約に組み込むことが許容されるかもしれないということである。しかし、これらの資料へのアクセス方法に関する紛争を避けるためには、発注書や作業指示書において契約条件の入手方法を誤って記載しないことが最善であり、また契約条件を非常に小さな文字で記載することは賢明ではないだろう。
一方、この事例は、自社のウェブサイトを参照することで海事契約の相手方に標準的な契約条件を課すことが可能であることを示しているものの、保険適用範囲に関する条件が確実に遵守されていることを確認したい場合は、保険会社(またはブローカー)から、保険が適切に設定されていることの独立した確認を得るべきである。
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