連邦巡回区控訴裁判所は、合議体による全会一致の判決で、米国特許商標庁特許審判部(PTAB)の判断を支持した。同判断は、クローン牛・羊・豚・山羊を対象とする特許請求の範囲が、米国法典第35編第101条に基づき特許適格性を欠く対象を規定していると認定したものである。裁判所は実質的に、ドリーという羊の製造方法は特許可能である一方、ドリーそのものは特許対象とならないとの見解を示した。
係争中の特許出願
係争中の特許出願は09/225,233であり、スコットランド・エディンバラのロスリン研究所に譲渡されていた。裁判所は請求項155および164を代表例として特定した:
155. 既存の非胚性ドナー哺乳類の生きたクローン体であって、該哺乳類は牛、羊、豚及び山羊から選択される。
164. 請求項155〜159のいずれか1項に記載のクローンであって、ドナー哺乳類が非胎児であるもの。
発明者らは、ドリー羊(成体体細胞からクローン化された最初の哺乳類)を生み出したのと同じ発明者である。連邦巡回控訴裁判所は、発明者らが本件では争点とならなかったクローン技術に関する特許(米国特許第7,514,258号)を取得していたことを指摘している。
2013年2月7日付の決定(最高裁のMyriad判決以前)において、特許審判部(PTAB)は、請求された主題が「自然界に存在するものと『著しく異なる特性』を有さない自然現象を構成する」として、§101に基づく拒絶を支持した。
連邦巡回区裁判所の判決
連邦巡回区裁判所の判決はダイク判事が執筆し、ムーア判事とワラック判事が賛同した。クレームは米国特許法35編第101条、第102条及び第103条に基づき拒絶されたが、裁判所は第101条に基づく拒絶に焦点を当てた。
判決は冒頭で、最高裁のマイリアード事件、 チャクラバティ事件、ファンク・ブラザーズ事件における判断が「自然界に存在する生物は特許の対象とならないことを明らかにした」と述べている。裁判所はファンク・ブラザーズ事件について、「細菌の混合物は…その『性質が自然の産物であり、人の手によって変更されていない』ため特許対象外である」と判断したと特徴づけている。裁判所はチャクラバーティ判決について、「改変された細菌は『新規性』を有し、『自然界に存在するものとは著しく異なる特性』を備え、『重要な有用性の可能性』を有するため特許適格性がある」と判示したと説明している。
したがって、「自然界に存在するいかなるものとも著しく異なる特性」を有する発見は…特許保護の対象となる。これに対し、既存の生物や野生で発見された新種の植物は特許の対象とはならない。
裁判所はまたMyriad事件を引用し、同判決を「自然界に存在する2つの分離された遺伝子に関するクレームは…『BRCA遺伝子自体が特許対象となり得ない自然の産物である』という理由で§101に基づき無効である」と判示したものと位置付けている。
争点となっている主張について、裁判所はチャクラバーティ判決の文言に基づくロスリン社の主張——クローンは「人間の創意工夫の産物」であり「自然の産物ではなく、それ自体の産物」であるため特許適格性がある——に言及した。これに対し裁判所は、チャクラバーティ判決の別の 箇所を引用して反論した。すなわち 「ドリーそのものは別の羊の完全な遺伝的複製体であり、『自然界に存在するいかなる家畜とも著しく異なる特性』を有していない」と述べたのである 。
裁判所は単に結論づける:
ドリーの遺伝子的身分が提供親と同一であるため、彼女は特許化できない。
裁判所はさらに次のように説明した:
ロズリン研究所の最大の革新は、提供者のDNAを保存することで、体細胞が採取された哺乳類とクローンが完全な複製となるようにした点である。このような複製は特許保護の対象とはならない。
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ロスリンが主張するクローンは、特許対象外となる主題の完全な遺伝的複製である。したがって、これらは特許保護の対象とはならない。
裁判所は、クローン動物における表現型の差異が特許適格性を裏付けるとするロスリンの主張を退けた。その理由は、当該表現型の差異が(i)クレームに記載されておらず、(ii)「(特許権取得を志す者の)いかなる努力とも全く無関係に」生じたためである。
裁判所はまた、ミトコンドリアDNAの差異が特許適格性を支持するというロスリンの主張を退けた。なぜなら、そのような差異は(i)クレームに記載されておらず、(ii)クローン動物に差異を付与することが示されていなかったからである。
裁判所は「ドナー哺乳類と同一の核DNAを有することが、必ずしも全ての事例において特許適格性を欠く結果をもたらすとは限らない」可能性を留保しつつも、係争中のクレームは「複製元のドナー動物とは著しく異なる特性を有するクローンを記載していない」と強調した。
米国特許商標庁(USPTO)第101条フォーラム
米国特許商標庁(USPTO)は本日(2014年5月9日)、新たに発行した特許適格性ガイダンス文書に関する一般からの意見聴取フォーラムを開催する。私を含む大半の発表者はファンク・ブラザーズ事件、チャクラバルティ事件、ミリアド事件について議論する予定だが、本件も注目される可能性が高い。