特許審判部(PTAB)は、同一の申立人が同一のクレームに対して提出した請願を却下した。後続の請願が全く異なる先行技術に依拠していた場合(IPR2014-00506)であっても、申立人は後続の試みのために最良の先行技術を温存すべきではないとの理由による。 しかし、同一の申立人が(最初の申立が却下された後)同一特許の異なる請求項に対して、同一または類似の先行技術に基づき新たな申立を提出した場合、どうなるのか?IPR2015-00881の決定によれば、新たに争われた請求項の1つ以上が特許性を欠く合理的な可能性があるとPTABが判断した場合、審理開始を決定し得る。 同一特許に対する複数申立てにおけるPTAB決定の異なる結果を理解するには、基礎となる法令の検討が必要である。
既判力と先行手続に基づく拒絶に関するPTABの裁量権
第315条に基づく法定禁反言(第315条(e)は特許権に関する禁反言規定であり、第325条(e)は植物品種権に関する禁反言規定である)は、特許審判部(PTAB)が既に特定の請求項について審理を開始し、かつ当該請求項について特許性を認める最終書面決定を下した場合に限り、不成功の申立人を阻止する(強調は原文のまま):
本章に基づく特許の請求項に対する当事者間レビューにおいて、第318条 (a)に基づく最終書面決定が生じた場合、当該レビューの申立人、実質的利害関係者又は申立人の関係者(privileged party)は、当該レビュー中に申立人が主張した、又は合理的に主張し得た事由に基づき、当該請求項に関して特許庁に対する手続を請求又は維持してはならない。
対照的に、第325条(d)項は、別の手続において「実質的に同一の先行技術または主張が特許庁に提出された」状況において、PTABがあらゆる申立てを却下する裁量権を広く認めている。この規定は、当事者特定でも、請求項特定でも、手続特定でもないため、第315条よりも広範である。 同時に、PTABがこれを適用するか否かを「選択できる」ため、裁量権に基づくものである。
PTABは裁量権を行使して却下することを拒否した
IPR2015-00881において、PTABは、1件の先行技術文献を除き同一の先行技術が関与していたにもかかわらず、その裁量権を行使して申立てを却下することを拒否した。主な理由は、後続の申立てにおいて異なるクレームに焦点が当てられていた点にあるようだが、決定では新たな先行技術文献の存在も引用されている。 前述の通り、先行する申立は却下されたため最終書面決定に至っておらず、本事案では禁反言が適用されない。複数の申立が係属する状況に直面する申立人及び特許権者にとって、禁反言と先行手続に基づく325(d)条の却下裁量権の相互作用を理解することは極めて重要である。