雇用主にとって打撃となる判決として、マサチューセッツ州最高裁判所(SJC)は最近、完全歩合給または「ドロー」と呼ばれる歩合前払金のみで報酬を受け取る非免除対象の社内営業従業員に対する時間外手当及び日曜割増賃金の権利を明確化した。本件 サリバン対スリーピーズ社事件において、SJCは100%歩合給制の従業員は、週40時間を超える労働時間に対して別途かつ追加的な時間外手当、ならびに日曜割増賃金の支払いを受ける権利を有すると判示した。
スリーピーズ社では、社内営業社員に対して完全歩合制で報酬を支払い、歩合の前払いを実施していた。この前払いは、最低賃金および時間給制の場合に発生する残業代・日曜出勤手当に相当するか、それを上回るよう設計されていた。
つまり、スリーピー社は従業員に対し、週ごとに前払い給与を支給し、従業員が常に最低賃金相当額に加え、労働時間に基づく割増賃金を確実に受け取れるようにしていた。
この慣行を利用するにあたり、スリーピーズはマサチューセッツ州労働基準局(MA DLS)が発行した2通のガイダンスレターに依拠した。このガイダンスにおいてMA DLSは、従業員に支払われる手数料と前払金の合計額が、賃金と時間外手当として本来支払われるべき金額と同額以上であれば、雇用主は適用される法令を遵守していると示唆した。
しかしスリーピーズ事件における州最高裁は、これらの書簡が雇用主を誤解させる可能性はあったものの、コミッションや前払い給与を遡及的に配分したり、時間外手当の支払いに充当したりできるかどうかについては言及していないと指摘した。州最高裁は、マサチューセッツ州時間外労働法の文言と目的、規制上のガイダンス、判例法のすべてが、雇用主が「ある賃金義務の履行のために支払われた金額を、別個かつ独立した義務の支払いに充当することはできない」と示唆していると見解を示した。 言い換えれば、雇用主はコミッションの前払い金を、法的に義務付けられた時間外労働手当や日曜割増賃金の支払いに充てることはできない。
当然ながら、これにより、歩合給制の営業従業員に対する時間外手当及び日曜出勤手当の計算における「通常の賃金率」が何かという疑問が生じる。歩合給のみで支払われる従業員には通常の時給が設定されておらず、週ごとの賃金は大きく変動するため、「通常の」賃金率の算出は、完全に不可能ではないにせよ、極めて困難である。 マサチューセッツ州最高裁(SJC)はこの問題についても判断を示し、完全歩合制従業員の「通常時給」は最低賃金であると認定した。したがって、非管理職の社内営業担当者であっても、完全歩合制で報酬が支払われる場合、週40時間を超える労働時間または日曜日の労働時間に対しては、時給18ドルが支払われなければならない。
スリーピーズ判決は、内勤営業社員向けの完全歩合給制度の普及度を考慮すると、広範な影響を及ぼす可能性が高い。マサチューセッツ州において、従業員に歩合給と前払い金のみで報酬を支払っている雇用主は、賃金支払い慣行を見直し、スリーピーズ判決で定められた新たな要件を遵守していることを確認するため、弁護士に相談すべきである。 コンプライアンス達成のための新たな給与制度導入には、スリーピー判決により雇用主に課せられた追加的な割増賃金負担を補填するため、既存のコミッション制度に大幅な調整が必要となる可能性もある。結局のところ、この判決の持続的な影響は、従業員への思わぬ利益というより、コミッション率の低下やノルマの引き上げとなる可能性が高い。
最後に、この決定は全国の歩合制販売員を雇用する事業主に対し、連邦の賃金・労働時間要件に加え、州および地方自治体が課す追加的な義務を認識しなければならないことを改めて認識させるものである。