2023年3月15日、米国連邦控訴裁判所第3巡回区(デラウェア州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州を管轄)は、公正労働基準法(FLSA)の適用上、有給休暇は従業員の給与の一部ではないとの判断を示した。
読者の皆様の多くがご存知の通り、FLSA(公正労働基準法)は、一般的に時給制で1.5倍の残業代が支給される非免除従業員と、残業代が支給されない免除従業員を区別しています。 ほとんどの免除規定が適用されるには、従業員は特定の職務要件を満たすだけでなく、勤務時間数に関わらず、業務を行った週ごとに最低保証給与(現在は655ドル)を受け取らなければなりません。雇用主は、こうした従業員の給与から勤務時間数に基づいて控除を行うことはできず、そうした場合、従業員は時間外労働の免除資格を失うことになります。
最近のヒギンズ対バヤダ・ホームヘルスケア社事件において、第三巡回区控訴裁判所は、雇用主であるバヤダ・ホームヘルスケア社(「バヤダ」)に有利な部分的即決判決(訴訟の一部却下)を下した第一審裁判所の判断を審査した。 ベイアダの医療従事者数名は、在宅医療・支援サービスを提供する同社が、管理職従業員の累積有給休暇(PTO)から不当な控除を行い、実質的に給与の減額に当たると主張した。
ベイダ社での雇用の一環として、管理職対象労働者は週ごとに所定数の「生産性ポイント」を蓄積することが義務付けられていた。生産性ポイントは特定の業務完了と引き換えに付与され、各ポイントはおよそ1.3時間分の労働に相当した。 ベイアダの従業員は、週単位の生産性最低基準値の増減を申請でき、それに応じて給与も増減した。従業員が生産性最低基準値を上回った場合、追加報酬が支給された。しかし基準値に達しなかった場合、ベイアダは不足分を補填するため、従業員の利用可能な有給休暇(PTO)を削減した。重要な点として、生産性ポイントの不足分をカバーする十分なPTOが不足していた場合でも、会社は従業員の保証基本給から控除することはなかった。
従業員らは、ポイント値が特定の業務に要するとベイアダ社が想定した時間と直接連動していたため、生産性ポイント制度は総労働時間に基づく報酬削減の代替手段であると主張した。したがって同社は従業員を、総報酬が労働時間に連動する賃金労働者として扱っていると訴えた。 労働者側によれば、ベイアダが休暇残高から有給休暇(PTO)を控除した行為は、FLSA(公正労働基準法)上、実際の不当な控除に該当し、これによりベイアダは時間外手当免除の適用資格を失った。従業員らはさらに、会社がPTOの活用方法について意図的に混乱を招くことで、PTOを使い切った場合、その週に実際に獲得した生産性ポイント分のみが支払われると従業員に誤解させたと主張した。
第三巡回区控訴裁判所はこれらの主張をすべて退けた。裁判所は、FLSA(公正労働基準法)上の従業員の法的分類を決定する際に重要な問題は、賃金体系が時給制に近似しているかどうか、あるいは雇用主が月給制従業員の基本給を減額すると脅したかどうかではないと説明した。むしろ問題は、雇用主が実際に減額を行ったかどうかである。本件では、従業員の基本給が実際に減額された証拠は存在しなかった。
さらに、FLSA(公正労働基準法)も関連規則も「給与」を定義していないものの、裁判所は給与と有給休暇(PTO)のような付加給付との区別を認めた。その理由として、雇用主が基本給ではなく有給休暇を控除する場合、給与期間終了時に従業員が受け取る予め決められた金額は変わらないため、雇用主は有給休暇を控除することで従業員の週給を減額することにはならないと判示した。 従業員が将来的に有給休暇を現金に換金できる可能性があるとしても、この事実は変わらない。
裁判所はさらに、「給与」と「付加給付」という用語の意味と歴史的用法も、両者が相互に排他的であるとの判断を支持すると説明した。 「給与」を「従業員が定期的に受け取る固定額の報酬」と定義し、PTO(有給休暇)を「従業員の給与や賃金に影響を与えず、従業員が会社を離れる時など不定期に支給される可能性のある付加的福利厚生」と説明した。裁判所によれば、これらの概念は明確に区別されるため、「給与」という用語はPTOのような付加的福利厚生を含まないものとして理解するのが最適である。
第三巡回区控訴裁判所の判決は、免除対象従業員の業績管理手段として有給休暇制度を活用したいと考える雇用主にとって朗報である。