ノーブル・ローマン社対B&MP社ほか事件において、イリノイ州北部地区連邦地方裁判所は、フランチャイズ契約違反を主張する訴訟の却下申立てを棄却した。 2010年3月、ノーブル社とB&MP社はフランチャイズ契約を締結し、B&MP社に対しノーブル社のブランド食品製品を10年間販売する権限を付与した。同契約では、B&MP社は週次売上高をノーブル社に報告すること、週次ロイヤルティ料を支払うこと、ならびに食品・飲料品、消耗品、資材、その他の製品をノーブル社が承認した供給業者からのみ調達することが義務付けられていた。
2011年、B & MPの唯一の所有者兼経営者であるレスリー・ペルドリアウは、B & MPの資産、負債、事業運営(フランチャイズ契約を含む)をアーミー・トレイル社に譲渡した。なお、レスリー・ペルドリアウはアーミー・トレイル社の唯一の株主兼取締役でもあった。 2年後、ノーブル社はB&MP社がロイヤルティ料を支払わなかったことを問題視し、フランチャイズ契約の債務不履行を主張した。さらに監査の結果、B&MP社が無許可の供給業者から原材料を購入していた事実が発覚した。ノーブル社は契約違反を通知し、訴訟を提起した。
ノーブル社の訴訟では、B&MP、アーミートレイル、レスリー・ペルドリアウを被告として、契約違反、ランハム法違反、およびペルドリアウに対するB&MPとアーミートレイルの債務に関する個人責任の請求が提起された。被告側は、アーミートレイルがフランチャイズ契約に署名していないことを理由に、同社に対する請求の却下を申し立てた。 さらに被告側は、ノーブル社がフランチャイズ契約で要求される譲渡に関する書面による同意を提供しなかったため、アーミー・トレイル社がフランチャイズ契約に基づくB&MP社の権利と義務を承継していないと主張した。裁判所は、ノーブル社がアーミー・トレイル社を認可されたフランチャイジーとして扱った時点で当該要件を放棄したと判断した。ノーブル社はアーミー・トレイル社の存在を認識しており、同社の銀行口座から手数料を受け取っていたため、書面による同意は不要であった。
同様に、被告らはアーミー・トレイル社がフランチャイズ契約書に署名しなかったことを根拠に詐欺防止法上の抗弁を主張した。裁判所はこの主張も退け、元の契約が譲渡され詐欺防止法の要件を満たしている場合、新たな契約書の署名が必要ではないと判示した。
被告側はさらに、ノーブル社がイリノイ州フランチャイズ開示法で要求される開示を履行しなかったため、フランチャイズ契約はアーミー・トレイル社に対して執行不能であると主張した。裁判所はこの主張も退けた。イリノイ州フランチャイズ開示法によれば、フランチャイズ契約が新たなフランチャイジーに譲渡される場合、フランチャイザーは新たなフランチャイジーに対して追加の開示を行う義務を負わないからである。有効な譲渡により、譲受人は譲渡人の権利義務を承継する。
被告らは最後に、ノーブル社が不当に遅延して請求を提起したとして、懈怠の法理に基づきランハム法に基づく請求の却下を主張した。却下申立てを審査する際、裁判所は訴状に記載された全ての主張を真実とみなさねばならない。したがって、懈怠の抗弁は、被告らがこの抗弁を主張する権利を有する真の遅延を立証する事実が明らかになるまで、即決判決申立てまで待つ必要があった。
本件は、フランチャイズ契約に基づく権利を当該契約の譲受人に対して行使しようとするフランチャイザーにとって教訓となる。譲受人がフランチャイジーの役割を引き継ぎ、フランチャイザーの書面による同意の有無にかかわらず契約に基づき履行を行う場合、フランチャイジーは引き受けた契約上の義務を否認できない可能性がある。 加えて、イリノイ州フランチャイズ開示法は、フランチャイズ契約の譲渡を受け入れた新たなフランチャイジーに対し、フランチャイザーが追加的な開示を行うことを義務付けていない。