フランチャイザーは、元フランチャイジー候補者が実際に当該商標を使用していなかった場合でも、潜在的な商標権侵害に対する確認的救済及び差止的救済を求める請求を提起できる。グレニエ・フランチャイズ・カンパニーLLCは、イリノイ州シカゴにおけるグレニエ・ベーカリーフランチャイズ出店に向け、DAZグローバルLLC及びその代表者ディミトリー・バウム(以下総称して「DAZ」)と実質的な交渉を行った。 交渉は2021年末から2023年春にかけて1年以上継続したが、最終的に決裂した。交渉期間中、DAZは予定店舗の10年リース契約を締結し、Grainier創業者フアン・ペドロ・コンデをシカゴに招いて同店舗の視察を実施。さらにスペインのGrainier本社を訪問し、コンデと二度目の面談を行った。
2023年10月、DAZはイリノイ州裁判所に提訴し、同州のフランチャイズ開示法および消費者詐欺・不正行為防止法違反、ならびに契約違反および約束的禁反言を主張した。Grainierは本件をイリノイ州北部地区連邦地方裁判所に移送し、ランハム法違反を理由に反訴した。参照:Baum et al. v. Grainier Franchise Company, LLC et al., No. 24 C 151, in the U.S. District Court for the Northern District of Illinois(イリノイ州北部地区連邦地方裁判所)。グレニエ社は、DAZによる自社商標の使用差止を求める確認的救済及び、同商標使用に関連する不正競争行為差止命令を請求した。DAZは反訴の却下を求める申立てを行った。
DAZの申立書は、グレニエが十分な損害を被っていないため提訴資格を欠き、当該商標の非独占的ライセンシーであることから商標権を行使する能力を有しないと主張した。DAZはさらに、当該商標を商業上使用していないため、グレニエがランハム法に基づく請求を行う権利を喪失していると主張した。裁判所は各主張について順に検討した。
裁判所は、DAZがグレイニエ商標をまだ使用していないものの、その方向に向けて積極的な措置を講じていたと認定した。DAZはグレイニエ予定店舗の10年リース契約を締結し、空間改修のために建築家を起用し、関連する法的文書を検討していた。裁判所はまた、当該空間のリース契約において、DAZが該当スペースでグレイニエベーカリーを運営することが要求されていた点にも言及した。
次に、裁判所は、グレニエが当該商標の使用権のみを有していた(商標の実際の所有者はグレニエの親会社であった)としても、同社がランハム法違反の主張を提起できると判断した。ランハム法に基づく原告は当該商標の所有者である必要はないが、何らかの所有権またはその保護に対する正当な利益を有していなければならない。 グレニエは、ライセンシーとしての商標権と、DAZの侵害行為による潜在的な損害を十分に主張した。最後に、裁判所は、同じ事実関係と、DAZが賃貸物件でのフランチャイズ運営の意思を否認しなかったこと、あるいは少なくとも契約条件の再交渉を求めなかったことを根拠に、グレニエの不当競争に関する請求を認める意向を示した。
本件は、フランチャイザーがフランチャイジー候補との交渉が不調に終わった後、自社の知的財産をどのように保護できるかについての指針を提供する。こうした保護策は、候補者が当該商標を実際に使用してフランチャイザーの権利を積極的に侵害していない場合、候補者に対する請求の根拠となり得る。