ほぼあらゆる分野と同様に、人工知能(AI)は従業員の採用・雇用方法も急速に変えつつある。AIによる履歴書スクリーニングや候補者マッチングツールは、採用プロセスをより効果的、効率的、経済的にすると約束している。調査によれば、雇用主の70%が2025年末までに採用プロセスでAIを活用する計画だ。しかし、差別や不公平を主張する声は、AIの勢いを阻害するか、少なくとも減速させる恐れがある。
2025年5月、モブリー対ワークデイ社訴訟において、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は、ワークデイ社のアルゴリズムによる選考ツールが高齢労働者に不均衡な影響を与えたとする主張に基づき、高齢労働者による全国規模の集団訴訟を仮認定した。つまり、当該ツールは人間による候補者審査前に、高齢労働者をより高い割合で排除していたとされる。裁判所は、ワークデイ社を通じて10億人以上の応募者が拒否された可能性があると指摘した。 ごく最近、同裁判所はワークデイに対し、候補者の採点・選別・順位付け・スクリーニングに「HiredScore」ツールを使用した雇用主クライアントのリスト提出を命じた。 このリストは、個人が集団訴訟に参加できるかどうかの判断に使用される。現時点で モブリー訴訟の被告はワークデイのみだが、雇用主が本件または他の訴訟で被告となるリスクは確実に存在する。AIの普及と成長を考慮すると、多くの雇用主が潜在的な被告となり得る。
一方、アメリカ国民は採用におけるAI利用に警戒感を示しており、複数の州がその使用を制限または管理する法案を提案している。例えばカリフォルニア州は2025年10月1日施行の規制を発表し、AIバイアスが差別禁止法に含まれることを明確化するとともに、企業監査を強く推奨している。 コロラド州では、AIツールによって不利益を被った労働者に対する透明性確保の通知と不服申立権を義務付ける包括的な法律が可決された。さらに、AI技術の開発者や、そのツールを導入する企業・政府機関に対する評価と監視も規定している。しかし8月、コロラド州議会は同法の施行日を2026年6月30日まで延期することを決議した。 この延期や他州での法案審議中断の背景には、トランプ政権が発表した「AI行動計画」がある。同計画では、過度に制限的な州のAI法に対し、連邦資金の削減や連邦通信委員会(FCC)による州法の優先適用をほのめかしている。
この革新的な技術の進展に法律は遅れをとっている。しかし、雇用主はリスクを認識し、以下の対策を含む対応策を講じなければならない:
- スクリーニング技術とその基準の理解
- 人間が最終的な意思決定者であり、監督権限を行使することを保証する
- AIスクリーニングツールの検証を要求し、バイアス監査を実施する
- ベンダー契約を厳密に評価し、表明保証および適切な責任分担を含めること。